細菌の浄化能力

細菌の分解能力を利用した環境の浄化は既に様々な分野で応用されています。

下水処理場での浄化

工場の排水には多くの有機物が含まれていますが、この排水に空気を混ぜながら撹拌すると、これらの有機物を細菌が二酸化炭素と水に分解します。

この細菌による浄化作用を利用した水槽は、曝気槽と呼ばれ多くの細菌が棲息しています。

曝気槽には通常細菌はフロックと呼ばれる塊を形成して水槽の底にあり、細菌が分解するときれいな水は上層に行くので、汚水ときれいな水が分離されるので、汚水を流しこみ続ければ処理済の水を上から排水できます。

これら水の浄化に利用されている微生物は、アルカリゲネス属、バシラス属、コリネバクテリウム属、エシェリキア属などの細菌の他にはゾウリムシ、ラッパムシ、ワムシなどの原生動物です。

石油を分解する細菌

石油を分解する細菌があり炭化水素資化性菌と呼ばれ、海洋での石油流出事故などで利用され注目を集めています。

この石油を分解する細菌が発見された時は、このような細菌は特殊な細菌であると考えられていましたが、その後の研究で実は石油を栄養とする細菌は普段は別の栄養源を食べていますがある条件が加わると石油を食べることがわかり、現在では数百種類の細菌が石油を食べることが明らかになりました。

石油は単一の成分から構成している訳ではなく、様々な成分を含む混合物で、石油を栄養源にできる細菌も種類ごとに栄養にできる成分が違うようです。

船舶の座礁や石油プラントの事故などで石油が流出する事がありますが、細菌の力だけだと10年くらい処理に時間を費やしてしまうので、石油を食べる細菌を増殖させる成分である窒素とリンを散布することで菌を増殖させる方法がとられ効果をあげているようです。

水銀を分解する細菌

国が発展する過程で、工業が発展する一方で環境に負荷を与えることもあり公害問題として日本でも様々な問題がありました。

日本国内では最悪の公害問題としては、水銀による郊外で熊本県にある水俣で水俣病と呼ばれる水銀中毒による公害を引き起こしました。

これは工場の排水の中にメチル水銀が含まれ、これを河川の流域の魚介類が摂取して蓄積した者を近隣の人間が食べることで神経に対する障害が出た公害事故でした。

水銀は、乾電池、温度計、蛍光灯などにも利用される工業製品に欠かせない液体金属で、かつては農薬としても使われた時期がありましたが、現在では農薬としての使用は禁止されています。

水銀などの重金属は、土壌へ蓄積され長期間とどまり、自然界に放出された水銀は食物連鎖により生物濃縮され、食物連鎖の上位にいる生物に最終的に蓄積します。

水銀に汚染された土壌は、汚染土の封じ込めや加熱処理により対策がなされてきましたが、費用が高額な上に水銀が除去されるわけではないので根本的な解決になりませんでした。

しかし、水俣病の水俣湾で棲息していることが確認された、アルテロモナス・マクレオディーと呼ばれる細菌は、水銀を揮発性の水銀蒸気に変換できる細菌で、この細菌を土壌に散布するとこの細菌の働きで体内に吸収されにくい毒性の低い水銀に変換されることがわかりました。

この細菌により変換された水銀は、水銀蒸気として環境に拡散され、生物に蓄積されないことから影響を与えないくらいに薄められます。

空気中の窒素を摂りこむ細菌

生物が生きていく上で欠かせない成分があり、その成分の中の一つが窒素です。

窒素は生存に必要不可欠ですが、生物は空気中の窒素をそのまま利用できる種は殆どいません。

窒素を体内に取り込める例外的な生物が細菌で、ある種の細菌は窒素を取り込むことができその名を窒素固定菌と言います。

植物はこのような窒素固定菌を自分の根の周辺に住ませることで、細菌が空気中から取り込んだ窒素を吸収しています。

窒素固定菌には、単体で生きている菌と植物と共生している菌があり、多くの植物は光合成で得た栄養をこれらの細菌に供給する見返りとして、これらの細菌から窒素の供給を受けています。

単独でいきている菌は、窒素固定をするだけでなく植物ホルモンの生成も行うため、植物の成長を促進させます。